税務争訟
■国税不服審判所の審査請求
税務署長や国税局長から、申告漏れや過少申告を指摘されたことにより更正・決定処分を受けたり、申告漏れや過少申告が「隠蔽・仮装」行為に基づき生じていたとして重加算税の賦課決定処分を受けたりした場合、これらの処分について不服がる場合には、いきなり裁判所に訴訟を提起することはできず、これらの処分を行った税務署長や国税局長に対する「再調査の請求」の手続きを行うか、国税不服審判所に対する「審査請求」の手続きを行う必要があります。
「再調査の請求」の手続きは、課税処分を行った当事者である税務署長や国税局長が、再度処分が適法であったか否かを判断する手続きですから、結果として処分が取り消される可能性は低くなってしまいます。
一方「審査請求」の手続きは、国税不服審判所という、税務署や国税局とは外部の行政機関(国税庁の特別の機関)が第三者として処分の適法性を判断するため、「再調査の請求」に比べて処分が取り消される可能性も高くなります。
また「審査請求」は裁判と異なり、国税不服審判所の判断は、税務署や国税局を拘束するため、税務署長や国税局長が行った課税処分が取り消された場合、税務署や国税局は裁判所に対して、国税不服審判所の判断に不服があるとして訴訟を提起することができないため、納税者に有利な結果となった場合、裁判よりも早期に紛争を解決することができます。
かたや納税者については、「審査請求」で主張が認められなかったとしても、裁判所に対して課税処分の取消しを求めて提訴することが可能です。
「審査請求」の手続きを行うに当たっては、行政不服申立に関する知識だけでなく、税法や会計の知識が必要不可欠です。
くわえて「審査請求」を行うことができるのは、課税処分の通知を受けてから3か月以内となっており、とても短い期間内で迅速かつ的確な準備を行うことが求められます。
税務署長や国税局長の課税処分に納得がいかず不服申立てを検討されている場合は、できる限り早くご相談ください。
■課税処分等取消訴訟
税務署長や国税局長の課税処分に対して、「再調査の請求」もしくは「審査請求」を行ったものの、納税者の主張が認められなかった場合、裁判所に対して課税処分の取消しを求める訴訟を提起することになります。
課税処分の取消しを求める裁判は、課税処分を行なった税務署や国税局の所在地に関わらず、すべての案件について東京地方裁判所で起こすことができます。
そして、東京地方裁判所には4つの行政専門部があり、課税処分の取消しを求める裁判は、すべてが前記4つの行政専門部のうちのいずれかの部に配点されることになります。
課税処分の取消しを求める裁判は、「再調査の請求」の決定もしくは「審査請求」の裁決の通知を受けてから6か月以内に起こす必要がありますが、不服申立て時の結論、税務署や国税局側の主張内容、提出された証拠、審判所の採決内容等、多岐にわたる資料を短い期間で検討する必要があります。
「再調査の請求」もしくは「審査請求」の結果に納得がいかず、裁判所に対して課税処分の取消しを求める訴訟提起を検討されている場合は、できる限り早くご相談ください。
■脱税弁護
国税局査察部から脱税の嫌疑で強制調査を受け検察庁に告発された場合、ほぼ間違いなく起訴されて刑事裁判を受けることになります。
また、検察庁に告発されると、東京であれば特捜部検事の取調べを受けることになりますが、呼び出しに応じなかったり、脱税を否認したりすると、逃亡のおそれがあると判断されて逮捕される可能性もあります。
脱税弁護は、検察の取調べ対応、その後の身柄拘束の阻止、身柄拘束された場合の早期身柄の解放等の点で、刑事弁護の知識が必須であることは言うまでもありませんが、検察から開示される膨大な証拠資料の分析、裁判の主張立証方針検討等において、税務会計の知識も必要不可欠となります。
脱税弁護においては、身柄拘束を避ける、執行猶予を目指す、無罪を主張する等、早期の方針決定及び対応が非常に重要となります。
国税局査察部から検察庁に告発をされた場合は、できる限り早くご相談ください。
■税理士賠償
税理士の過誤によって過大な税負担を負うことになった場合、当該税理士に対して、過大に負担した税額分の損害賠償を請求することができます。
例として、顧問税理士に決算を依頼していたところ、数十年来に渡って経費の控除漏れがあり、過大な税負担をしていた場合、更正の請求によって税務署から還付を受けられるのは過去5年分の過納付分に限られますので、過去5年より以前の過納付分について損害賠償を請求することが考えられます。
一方、税理士においても、納税者が決算の際に提供した資料に不足や不備があったにもかかわらず、当該資料を用いなかったもしくは適切に用いなかった過誤があった等と、不当に責任追求をされてしまうこともあります。
税務過誤は、税額の違いにはっきりと現れてしまうため、損害額自体には争いはなく、過誤が生じた原因が税理士にあるのか納税者にあるのかが争点となることが多いのが特徴です。
税理士の過誤によって過大な税負担を負うことになった場合、納税者から不当に責任追求をされてしまった場合は、できる限り早くご相談ください。